精子や卵子・受精卵・胚を取り扱う為に、知識と技術の情報交流や研修を通じて不妊治療レベルアップを願い、自主的に1996年臨床エンブリオロジストの会を立ち上げました。
その後、毎年ICSIや細胞凍結保存その他の実技実習を含む研修(workshop)の実施、JournalやE-news(会報)、エンブリオロジストのためのARTラボ必須マニュアルなどの発行、メーリングリストなどエンブリオロジストのネットワークを通じて全国どこでも最新の技術で貢献できるようエンブリオロジストによるエンブリオロジストのための活動を続けています。
学会組織図(PDFファイル 33KB)
理事長就任のご挨拶
現在、我が国および世界の医療は新型コロナウイルスの脅威にさらされています。不妊治療においても、妊娠へのリスクが不明であることを理由に自粛が求められています。このように重要な時期に、2020年度定時総会の決議によりまして、沖津摂氏の後任として一般社団法人日本臨床エンブリオロジスト学会の理事長を拝命いたしました。職責の重さを認識するとともに皆様のためになる学会を目指し、精一杯の努力をして参る所存でございます。
これまで、日本臨床エンブリオロジスト学会は、皆様のご支援のもとに「日本のラボにおける技術水準の向上と技術伝承」を目的に活動してまいりました。日本における体外受精技術は1983年に東北大学における児の誕生によって始まり、今日に続いています。当時、不妊症新治療といわれた体外受精関連技術の多くは医師が海外留学やセミナーに参加して勉強し、日本に持ち帰って臨床に応用されたという歴史があります。しかし、今では培養室における仕事を医師に代わりエンブリオロジストが担っています。これらの高度な培養技術を日本国内で学べる場を提供し、普及を図る目的で設立されたのが本学会前身の日本臨床エンブリオロジスト研究会だったのです。
今、本学会として取り組むべき課題は何か? ①ラボにおける医療安全の確立。病原性感染微生物の脅威から我々自身を守るために、情報と培養室業務見直しの提案を発信して参ります。②新技術の導入と習得への対応。例としては、様々な場面におけるAIの導入が上げられます。胚の評価法や細胞の遺伝子解析技術の進化、そしてICSIにおける精子選別技術への導入などが想定されます。我々は、このようにすぐそこにある未来を想像し、何が求められているのか?できることは何なのか?を敏感に捉えて対応して行かねばなりません。当学会は、今後を見据えて、これら新技術に適応したエンブリオロジストの育成を推進して参ります。③研究の促進。エンブリオロジストには研究者・科学者としての役割が期待されています。定期大会、ワークショップ、WEBセミナー等を通じて最新の技術・情報を提供するとともに皆様のニーズに応えていきたいと考えております。
そして、認定臨床エンブリオロジストと胚培養士の2つの資格における統一化および国家資格化。実際の進捗については、なかなか進んでいない現状がございます。国や他学会との話し合いの中に難しい現状が存在します。当学会としてはあらゆる情報収集と外部への働きかけを行い、少しずつでも前進して参る所存です。
沖津摂前理事長がこれまで長年にわたり、学会運営の安定化をはかりながら、定款・運営細則の改訂や事務局の外部委託などに取り組んでこられ、学会としての体をなすまでになりました。今後、当学会をさらに発展させるために、新規会員の獲得や学会活動への積極的な参加・ご意見をお寄せいただくなど、皆様のご協力が必要となります。皆様と新理事・代議員ともに何ができるかを一緒に考えて、力を合わせることにより、学会を盛り上げて参りたいと思います。私は学会の代表として精一杯頑張って参ります。会員の皆様にもこれまで同様、何卒ご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
平成30年7月吉日
一般社団法人 日本臨床エンブリオロジスト学会
理事長 武田 信好